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ウェットフードと水分。研究で分かっていること、分かっていないこと
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「猫にはウェットフードのほうがいい」という話をよく聞きます。この記事では、その根拠になっている研究を一つずつ読み、何が分かっていて何が分かっていないかを整理します。先に結論を書くと、水分の多い食事で尿が薄くなることと、同じ栄養のフードなら水分が多いほうが食べるエネルギーが減ることは、研究で確かめられています。ウェットは1日あたりの費用がドライより高いので、ドライと組み合わせる選び方も現実的です。
猫はもともと水をあまり飲まない
猫の祖先は乾いた土地に暮らしていたリビアヤマネコで、獲物の体に含まれる水分で水をまかなっていました。そのため、のどの渇きを感じにくく、水だけを飲んで補う行動が弱いことが知られています1。獲物の水分は70%前後です。ドライフードの水分は10%前後なので、ドライが主食の猫は、祖先に比べて食事からとる水が大きく減ります。それを飲み水で補えているかどうかは、猫によって差があります。
獲物は小動物の体の水分の目安。ウェットは75〜85%の商品が多く、ここでは80で描いた
水分の多いフードで、尿は薄くなる
この点を直接調べた研究が Buckley らの実験です。1種類のドライフードに水を加えて、水分を6%、25%、53%、73%の4段階にし、6頭の健康な成猫に3週間ずつ食べさせました。水分の多いフードを食べた猫は、自分で飲む水の量を減らしました。それでも合計の水分摂取量は73%のフードでいちばん多くなり、尿が薄くなりました。尿中のシュウ酸カルシウムの過飽和度(結晶ができやすさの指標)も低くなりました2。
この研究の強みは、同じフードの水分だけを変えたことです。「ウェットだから」ではなく「水分が多いから」尿が薄くなることが分かります。猫がドライフードを食べるときに水で戻す方法も、同じ理屈で水分を増やせます。ただし、尿が薄くなることと、病気が減ることは別の話です。この研究は健康な猫の尿の性質を調べたもので、病気の発生を追ったものではありません。
同じ栄養のフードなら、水分が多いほうが食べるエネルギーが減った
Wei らは、缶詰のフードと、それを凍結乾燥して水分だけ抜いたフードを、16頭の雄猫に3週間ずつ交互に与えました。栄養は水分以外まったく同じです。缶詰のまま食べた期間は、食べるエネルギーが減り、体重も減りました。体の組成(脂肪と筋肉の割合)は変わりませんでした3。
水分でかさが増えると、同じ量を食べてもエネルギーが少なくなる、という単純な理屈です。著者は、これが猫の体重管理に使える可能性があるとしています。ただし、この研究で比べたのは「同じ栄養で水分だけ違う」フードです。市販のウェットとドライは栄養の中身も違うので、どのウェットでも同じ結果になるとは言えません。
ウェットの総合栄養食と一般食は、別のもの
ウェットフードを選ぶときにいちばん大切なのは、「総合栄養食」の表示があるかどうかです。日本のペットフード公正取引協議会の規約では、総合栄養食はそのフードと水だけで必要な栄養がとれるものです4。一方、パウチや缶の多くは「一般食」で、おかずとして総合栄養食と組み合わせる前提のものです。一般食だけを主食にすると、栄養が足りなくなります。
タウリンの推奨量は、欧州の FEDIAF の指針で、ドライが乾物100gあたり0.10g、ウェットが0.20g です5。ウェットのほうが多いのは、缶やパウチの加熱殺菌でタウリンが失われやすく、それを見込んで多めに設計するためです。総合栄養食の表示があるウェットは、これを踏まえて作られています。
下に挙げたのは、このサイトで比べている総合栄養食のウェットから、大手メーカーのパウチと、輸入の缶を選んだ、送料込みの価格の例です。特定の商品を勧めるものではありません。価格は毎朝更新され、1日あたりの費用は体重4kgの成猫が1日180kcalをウェットだけでとる前提です。ウェットは水分が多いぶん、同じエネルギーをとるのに量が多くなり、ドライより1日あたりの費用が高くなります。
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総合栄養食のウェットを1日あたりの費用で並べた一覧は、こちらにあります。1日に何袋あげる計算になるかも、各商品のページに書いています。
ドライと組み合わせたときの費用
このサイトで比べている総合栄養食のドライ153商品とウェット81商品。体重4kgの成猫が1日180kcalを食べるとして、送料込みの最安値から計算
ウェットだけで1日分のエネルギーをとると、費用はドライの数倍になることが多いです。そこで、ドライを主食にして、ウェットを1日1袋足す、という組み合わせが現実的な選び方になります。カロリーの4分の1をウェットにすれば、水分の摂取量はドライだけのときより増え、費用の増え方はウェットだけのときより小さくなります。
このサイトの猫のフード代のページでは、ドライとウェットの割合(ドライだけ、4分の1、半分、ウェットだけ)と猫の体重・頭数を切り替えて、今日の送料込みの最安値で1か月の費用を計算できます。
組み合わせるときの注意は2つです。1つは、ドライとウェットの両方のエネルギーを合計して、1日の必要量(体重4kgの避妊・去勢済みの成猫で約130〜190kcal5)に収めることです。ウェットを「足す」だけでは食べ過ぎになります。もう1つは、ウェットは開けたら日持ちしないので、1袋の量と猫の食べる量を合わせることです。
ドライフードが主食の猫にできること
ウェットを使わなくても、水分のとり方を増やす方法はあります。
- 水を飲む場所を複数作る。食器と離した場所にも置く。
- 水は毎日替える。器は広く浅いものを好む猫が多い。
- ドライフードに水やぬるま湯を足す。Buckley らの研究と同じ理屈で、食事からの水分が増える2。
- 尿の量や色、トイレの回数を、ふだんから見ておく。
飲水に関する工夫の多くは、研究で効果が確かめられたものではなく、経験にもとづくものです。確かめられているのは「食事に含まれる水分を増やすと、尿が薄くなる」ことまでです。
まとめ
- 猫は水をあまり飲まない。食事の水分が、水分摂取の大きな部分を占める。
- 食事の水分を増やすと、尿が薄くなることは研究で確かめられている。
- 同じ栄養で水分だけ多いフードでは、食べるエネルギーと体重が減った。
- ウェットは総合栄養食と一般食を分けて選ぶ。費用はドライより高いので、組み合わせが現実的。
この記事は、猫の食事について調べたことを書いたもので、獣医師の診断や助言の代わりにはなりません。尿の異常や病気のある猫については、かかりつけの獣医師に相談してください。ウェットフードと病気(膀胱炎・糖尿病)の関係を調べた研究は、商品の紹介を置かない別の記事「ウェットフードと病気の研究」にまとめています。
参考文献
- Zoran DL. The carnivore connection to nutrition in cats. Journal of the American Veterinary Medical Association. 2002;221(11):1559-1567. https://doi.org/10.2460/javma.2002.221.1559
- Buckley CMF, Hawthorne A, Colyer A, Stevenson AE. Effect of dietary water intake on urinary output, specific gravity and relative supersaturation for calcium oxalate and struvite in the cat. British Journal of Nutrition. 2011;106(S1):S128-S130. https://doi.org/10.1017/S0007114511001875
- Wei A, Fascetti AJ, Villaverde C, Wong RK, Ramsey JJ. Effect of water content in a canned food on voluntary food intake and body weight in cats. American Journal of Veterinary Research. 2011;72(7):918-923. https://doi.org/10.2460/ajvr.72.7.918
- ペットフード公正取引協議会. ペットフードの表示に関する公正競争規約・施行規則(2024年10月1日施行). https://pffta.org/
- FEDIAF(欧州ペットフード工業会). Nutritional Guidelines for Complete and Complementary Pet Food for Cats and Dogs. 2024年版. https://europeanpetfood.org/self-regulation/nutritional-guidelines/
ほかの読みもの
- 猫の食事で大切なこと。総合栄養食と一般食の違い、1日のカロリー、水について分かっている範囲猫のフードは種類も値段の幅も広く、「何を基準に選べばいいのか」が分かりにくいものです。この記事では、宣伝の言葉ではなく、査読のある論文と公的な栄養指針を出典にして、猫の食事について分かっていることを整理します。結論を先に書くと、はっきり言えるのは次の3つです。「総合栄養食」と表示されたフードを主食にすること。食べる量をエネルギー(kcal)で管理すること。水をいつでも飲めるようにすること。この3つは値段の高いフードでなくても実現できます。
- ちゅ〜るは1日何本まで?1本のカロリーと、総合栄養食のちゅ〜るとの違い「ちゅ〜るを欲しがるけど、1日何本まであげていいの?」と迷う飼い主は多いと思います。決まった本数はありませんが、計算の材料はそろっています。1本のカロリーはパッケージに書いてあり、おやつの量には獣医師の団体の目安があります。この2つから計算すると、体重4kgの成猫なら、ふつうのちゅ〜る(1本約7kcal)は1日2本まで、総合栄養食やエナジーのように1本12〜14kcal あるタイプは1日1本までが目安の範囲です。